野球トレーナー時代に感じた「患者と医療の壁」
そしてこのトレーナー時代こそ、最初に「患者と医療の壁」を感じた時期で、もっとも高い壁を感じた時期かもしれません。
私がトレーナー時代に感じた最大の問題は、
医療従事者のスポーツ選手へのメンタル面における理解度の乏しさ
です。
当然、やったことも見たこともないようなスポーツに対して、そこで発生した怪我や故障を予想することは困難です。
それだけスポーツの障害というのは診察が難しいものです。
しかし、机上の空論で患者の故障を判断することはかなり危険な行為です。
分からないなら分からないなりの対応があります。
簡単には「分からない」と言えない職業であることも理解しています(患者の不安をあおるため)が、患者の人生がかかっている選択です。
そんな選択に適当な診断や、無難な回答を繰り返したり、適当な診断をしていていいのでしょうか。
選手のメンタルな部分、故障が発生してしまう外力の方向や質などは実際にプレーした人間でなければ中々わかりません。
いくら医療に従事している専門家といえども、本質的な所は分かっていないと確信する出来事ばかりでした。
特にスポーツ選手というのは体に関しては感覚的に繊細です。
自分の口では、うまく説明することができないのですが、体の隅々まで正常ではないことを感覚的に感じ取ることができます。
科学的に原因を取り除いたとしても、再発する際の可能性などを感じ取ります。
この繊細な痛みや不具合は、不調な選手の平穏なメンタルをさらに奪っていきます。
パフォーマンス面でも影響が出やすくなり、結果的に思った動きができなくなるという負のスパイラルに陥りかねません。
この負のスパイラルは故障の再発にさらなる拍車をかけてしまいます。
スポーツ選手のこの繊細なメンタルを理解した治療が求められていると思いますが、そこまで行う施設というのは少ないのが現状です。